無理した視力1.0のメガネ
58歳、男性、ゆるい近視のご新規Tさま。
1年前に初めて他店で遠近両用メガネを作られました。遠方は問題ないのですが、仕事でパソコンを見ることが多いのですが、どうにも使いづらい。僕には遠近両用は向かないのかな?と思うのでとりあえずパソコン業務が楽にできるメガネが欲しいとご来店されました。
まあ、この話だけを聞くと遠近ではなく中近や近々レンズで問題解決かな、と思い視力測定をしました。
すると、遠近両用の度数が過矯正であることが分かりました。しかも結構強めの度数になっています。近視の過矯正メガネは我々メガネ屋にとっては絶対に避けたいです。なぜなら常に眼が余計な仕事をしないとどの距離も見えないからです。
T様の場合、遠くを見る度数が-1.5Dのメガネをかけていました。僕が測った度数は-0.25Dでした。
遠くを見る場合、
-0.25Dのメガネで遠くがしっかり見えるのに-1.5Dの度数が入っているとその差+1.25D分だけ眼の中のレンズが膨らんでいます。もちろん自覚はありません。でも見えています。はい、しっかり見えています。なのでご本人は何ら問題ないと思います。
近くを見る場合、
例えば眼前50センチのものを見ようとすると+2Dの仕事(=調節)を眼がしないと見えません。僕が測った度数だと遠くは当然調節しないで見えていますので眼は+2Dの調節をするだけで近くが見えますが、この過矯正メガネだと遠くを見るのにすでに+1.25Dの調節をしている上に更に+2Dの調節をしないといけないので合計+3.25Dの調節をしないと近くが見えないことになります。
20~30代なら調節力が十分にあるので問題ないかというか(いや、ほんとはダメですが)遠くも近くも見えますが、例えば50歳だと調節力はおおよそ+2Dと言われているので+3.25D必要ならもうどうしても見えないことになるのです。
かけておられた遠近両用は年齢に対して過分な調節を助ける度数(=加入)が入っていました。そりゃそうでしょう。遠方視ですでに調節しているのですから、足りるわけがない。でも加入が大きいと見づらい遠近になるのです。
お客様が自分は遠近両用がかけられないのでは?と思っていたのは実は過矯正メガネでかつ、その状態で近くを見るために過剰な加入が入ったレンズだったからです。
そんなことを視力測定しながらT様に説明していました。
そうすると、デスクワークのための近々は手持ちのフレームにレンズ交換して作るけど、遠近を別にフレームも新しく作り直すとおっしゃいました。
今の遠近ではスマホのラインなどに文字を打つのもしんどい状態だったのが、僕が測った遠近のテストレンズでは楽に文字入力できるととても喜んでおられたので、そうおっしゃっていただけたのでしょう。
これ以外にも両目の使い方、近くを見るのが得意かそうでないかなどを測定し、その結果をレンズに反映します。
最後にボソッとTさま。前のメガネ屋はお姉さんがちゃっちゃっと測っただけやった。メガネはそれ以外にも作ったけどこんないろんな検査で丁寧に測ってもらったの初めてや、とおっしゃっていただきました。
僕は常々言っていますが、近視、老眼、遠視、乱視などを測るのはどこでもしますが、眼の使い方を調べないと本当に楽なメガネはできないと考えています。両目でひとつの物を見る。当たり前のような話ですが、意外に苦手な人が多いです。特に近くを見るのが苦手な人は多いですね。そこをいかに楽にできるかが大事だと思います。

右奥がレンズ交換をした近々メガネ。左がフレームもお買い上げいただいた遠近両用メガネです。フレームは男性に超人気のMasaki Mastushimaです。
ありがとうございます!