片眼が遠方、もう片眼で近方が見えるメガネ
今回はかなり特殊な例です。これは全ての人ができるわけではありません。むしろごく限られた方にしかできない仕様です。
60代女性のYさま。右目は中度近視、左目が弱度の近視です。かなり左右の度数差があります。実は両眼の度数の差が2D以上ある場合は不等像視といってメガネとしてかけられない場合があります。
近視の場合はメガネをかけると物の大きさが小さく見え、逆に遠視や老眼鏡をかけると大きく見えます。これは眼とレンズが離れているので光学的にどうしても実際の大きさと同じにならないのです。コンタクトレンズの場合はレンズと眼がひっついているので不等像視は出ません。左右の度数差が大きいとメガネだと見える物の大きさが違って見えます。そうすると脳でそれをひとつにすることはできず、ダブって見えてしまい使えないメガネになるのです。
Yさまは15年ほど前までは別のメガネ屋さんでメガネを作っていたのですが、この不等像視に悩まされ続けており、メガネに満足されていませんでした。特に右目の度数を遠用度数にするとふらふらしてかけられないようです。以前のメガネ屋ではそんな度数のメガネばかりを作っていたので疲れていたご様子でした。もう理由は忘れてしまいましたが当店でメガネを作っていただくことになりその不等像視を軽減させたメガネを作らせていただいたところとても喜んでいただき、それ以来当店でメガネを作らせていただいています。
で、何をしたかと言いますと中度近視の右目には近くが見える度数。弱度の左目に遠くが見える度数のメガネを作ることによって、ひとつのメガネで遠くも近くも見え、違和感もなくなったのです。当時は50才前半で老眼もそう進んでおらず、遠くを見たときに右目はぼやけますが、違和感になるほどではありませんでしたのでとても喜んでおられました。
さてそれから15年が経ちました。当然老眼も進みます。そうすると右目の度数はかなり緩めにしないと近くが見えませんが遠くを見たときはぼやけが大きくなり、左目がしっかり見えている分これはこれで像がダブり使えないメガネになってしまいます。
遠方を見てもそう違和感なく、しかも近くもまあ見える。そのいいあんばいの度数を求めるのに苦労しましたが今回も何とかできました。
まあこの方、メガネを外せば近くは見えるのでどうしてもしんどいときはメガネを外されているので問題ないかと。
このように両眼視をせず片眼だけでものをみるのをモノビジョンと言います。モノビジョンのメガネは慎重にしないといけません。
お客様にもよく説明するのですが、完全矯正値=遠方が最も良く見え、かつ眼に負担がかからない度数、を求めるのは比較的簡単です。じゃあ装用度数=メガネに入れる度数、は完全矯正値でいいのか?となると僕の場合はほとんどそうはなりません。メガネの使い方、眼の使い方のクセ、日頃どの距離を見ることが多いか、「見る」で一番困っていることは?などを考慮した上で装用度数を決めると完全矯正値にはまあならないです(^_^;)
モノビジョンメガネもその延長線上にあります。お客様の困りごとを解決し、且つ楽なメガネは?を追求した答えのひとつがこれです。まあ適応する人は非常に少ないですが(^_^;)