腕時計の分解掃除
腕時計の修理は基本分解掃除です。言葉通り受け止めると機械を分解して掃除をするということですね。
これは手巻きや自動巻、いわゆる機械式時計の場合は当てはまります。ゼンマイの力で歯車を回すことでカレンダーや時間を表示させます。つまり時計の中は全て運動エネルギーで動いています。
今主流の電池式やソーラー式の場合は違います。元々のエネルギーは電気エネルギーです。この電気エネルギーで水晶(クオーツ)を規則正しく振動させ、そこから運動エネルギーに変換して歯車を回します。つまり電気回路が含まれているのです。これは半導体などの集まりなので一見しただけではどこに不具合があるのか分かりません。回路不良の場合回路交換といって電気エネルギーを運動エネルギーに変えるまでの回路をごっそりと交換しないと行けません。これはメーカーによっていろいろ変わるので実は面倒になります。
当店で腕時計の修理をお預かりした場合、メーカー修理の他に職人さんによる修理もしています。昔はメーカーも部品を卸していたので回路不良でもメーカーから仕入れて修理が可能でしたが、昨今回路はおろか歯車などの部品も卸さないようになってきており、職人さんは大変困っています。
今回の修理も回路不良でしたのでごっそり中身を交換することになりました。
右側にあるのが元々入っていたムーブになります。それを代替ムーブに交換するのですが、これが以外に面倒です。今回は形見なので何とか修理して欲しいとのご依頼。他店では修理できないと断れたそうです。それはそうでしょう。回路不良の場合先に書いたように部品の提供がないと施しようがありません。
今回中身はメーカー品ではなく代替です。なので正確には中と外が違うメーカーになってしまっていますが、見た目は以前の通りです。もちろんお客様にもその点ご了承の上修理しています。
中と外が変わるのが嫌、と言う方もおられるかとは思いますが今回の最優先事項は動かす事でしたのでそういう意味ではこんな修理もありです。お客様も大変喜ばれていました。