当店が累進レンズにNikonさんをよく使う理由
1枚のレンズの中で度数が変化するレンズを累進レンズと言います。遠近、中近レンズなどが代表格ですね。
メーカーは多く存在しその数国内外を含め10社以上。国内で有名メーカーとしてはホヤさん、ニコンさん、東海光学さん、伊藤レンズさんなど。海外ではツァイスさん、ペンタックスさん、コダックさんなどでしょうか。
累進レンズは設計上非点収差と呼ばれるぼやける部分がどうしても生じます。それ故慣れが必要になります。各メーカーそれぞれの理論でその収差を減らす、あるいは感じさせないようにして少しでも慣れやすいようにしています。
そんな多くのメーカーの中からなぜ当店はメインでニコンさんを使っているか、今回はこの辺のお話をしたいと思います。
当店は父が創業し2代目の私が継いで経営しています。累進レンズが日本に出始めたのはおおよそ40年前。意外に新しいですね。発売当初の製品はお世辞にも良い物ではなく、昭和60年代になってようやく一般的にも使えるような製品が出始め、平成になって一気に広がっていった感じです。父が社長の頃は日本メーカーでは1社独占とまでは言いませんが、ニコンさんではないメーカー、A社の累進レンズが多く使われていました。
当店もはじめは累進レンズはA社がほとんどでした。そんな中、ニコンさんか新製品のセミナーがあったのでたまたま?参加したところプレシオ・ダブルという新製品の紹介がありました。
普通新製品発表セミナーはその製品がいかに良いかを説明するのに尽きるのですが、このセミナーの前半はメガネマーケットにおける顧客満足を得るためには何が必要かなど新製品に関係なく、お客様にどうしたらご満足頂けるかをメインにレクチャーがあり、後半に製品の説明を始めたのです。
僕はその時直感で思いました。ニコンさんはもちろんメガネ店にレンズを卸すのが目的ですが、見ているのはエンドユーザーだなと。売れる商品ではなく満足してもられる商品を目指しているなと、そう感じたのです。
それまでレンズメーカーの担当営業マンはもっとウチのレンズ使って下さい、高いレンズを勧めて下さいと数字が上がることが営業の仕事(まあ、確かにそうなんですが・・)一辺倒なところがあったのですが、ニコンさんはそうではなかったのです。
その当時はまだまだ景気も今に比べれば良く、売ってナンボというガチガチの売上至上主義が主流だった時代。僕もそんな考えで商売をしていましたが、ニコンさんのセミナーを聞いてなるほどな~と感じたのを覚えています。
しかもプレシオ・ダブルは確かに良い製品で、お客様の反応も大変良く、評判はとても良かったです。
その後ニコンさんは新製品を出す度に全国セミナーを開催し、その度にメガネ店はどうあるべきか、売上至上主義ではなく顧客満足を得るにはどうしたらよいかをテーマにレクチャーし、そのついでに新製品の説明がある、というスタイルを数年貫きました。
そうしているウチに当店もA社以外の累進レンズを取り扱い始め当時国内メーカー3社の累進レンズを使い分けていました。
そこにニコンさんのフラッグシップモデルのAIが発売されました。このレンズはニコンさんと取引しているだけでは仕入れることができず、ニコンさんが選んだ店にしか卸さないという画期的なシステムの流通経路製品でした。
この製品が発売されたとき、製品リーフレットには開発者の名前と顔写真が付いていました。最近流行ってますよね、スーパーなんかで「私が作りました」みたいな。これって掲載される方は大変だと思うんですよ。やっぱり責任を感じると思うんですよね。
そして販路を制限したのはとても良いレンズなので技術力のないお店には卸したくないという考えが合ったのではと僕は思っています。もちろん技術力があってもニコンさんをメインにしていないお店も多くあるのでその点は誤解のないように。
それでもニコンさんはこのAIというレンズを大事に育てていきたいんだな~ということが伝わるようでした。
また、ニコンさんは直営店を東京に構えています。これはある意味アンテナショップでここで得たノウハウを小売店にフィードバックすることが目的だそうです。実はA社も小売店を出したのですが、その目的は社員の福利厚生だったそうです
ここでも差が出るのですが、ニコンさんは情報収集のために、A社は福利厚生のために小売店を出したのです。結局A社の小売店は売り上げが悪かったのか数年で退店しました。
そんなことを見聞きしているウチにニコンさんはやっぱりお客様を見て製品を開発していると強く思えるようになりました。A社はレンズのお客様用リーフレットすら作っていません。とにかく良いレンズを作ったから売ってちょうだい、という姿勢が見え隠れするのです。
もう時代は変わり売上至上主義は当店レベルのお店では通用しません。それよりも僕たちが良いと思える物を提供する。自分たちが良いと思えない商品をお客様に勧めることでお客様により満足して頂く、喜んで頂く。売上はその満足度のバロメーターに過ぎません。常にお客様本位の目線なんです。すみません「お客様は神様です」ではないです。神様ではありませんが、僕たちの考えに賛同して頂ける方々によりよいものを勧めたい。そういう気持ちです。
この精神はニコンさんも同じなのではなか?そう思うっているウチにだんだんとニコンさんのシェアが増えていったのです。
そこにAIが発売されこの製品の性能がすばらしかったので当店のハイエンドレンズはこれになり、また中級クラスもロハスZシリーズ今年の6月に発売されこれまた評判が良いので中級~高級累進レンズはニコンさんがメインになったのです。
先日ニコンさんの小売店「ニコンメガネ」に見学に行ってきました。ここの社長は僕が先に書いたプレシオ・ダブルの製品説明セミナーを聞き妙に納得したときのプレゼンターです(^^) その社長さんのお話を聞き目指しているのが僕たちの店と同じであると確信できました。
製品開発においてよりよい物を作る姿勢はどのメーカーも同じと思います。ただそこにどんな理念に基づいているのか、実はこれがとても大事だと思っています。他社の話になりますが、東海光学さんのニューロシリーズも僕はそう感じています。
ここまで書いた僕の感じたことはあくまでも僕個人の意見でもちろん今でもA社をメインとして累進レンズを販売されているお店はたくさんあり、それを否定するつもりなど毛頭ありません。所詮1小売店。店主の考え方ひとつで売る物も変わります。僕は僕が共感できる商品をお客様に提供したい。その思いでニコンさんの累進レンズをメインに取り扱っています。