補聴器の新規ご購入です

今回のお客様は90歳の女性Hさまです。ご近所にお住まいですが、なかなかお一人では来られないのでお子様に連れられてご来店なさいました。

おふたりが言うにはもう年も年なんでそう高額でなくていいので今よりももうちょっと聞こえるようになったら嬉しいとのことでした。自覚としては5年前くらいから聞こえが悪くなったように思うそうです。

耳鼻科にも行きましたが、年齢的なもので仕方がないねと言われたそうです。まあ、ほとんどの方が受診されてもそういわれるのですが(^^;)

早速聴力測定です。

上のグラフは純音測定結果です。健康診断でもする音がしたらボタンを押す測定です。〇が右耳、×が左耳です。結果を数字で表すと左右ともに50dB 前後で軽度~中等度難聴で、難聴度としては比較的良い方です。

この程度の難聴の方は一般的にちょっと大きめの声を出せば会話が成立しますが、Hさまは測定前の問診でも大きめの声でしかもかなりゆっくり話をしないと伝わらない状態でした。これは次の測定結果が悪いかな…と予想したところ、案の定でそれが下の測定結果です。

下の測定はスピーチオージオと言って言葉の聞き取りがどのくらいあるかを測定します。声は大きい方が聞き取りやすいですよね。難聴の方は元々小さい音が聞こえませんが大きければ聞こえます。では音ではなく声はどうでしょう?声の聞き取り能力と音が聞こえるというのはある意味別の能力が必要になります。なのでどのくらいの声の大きさでどのくらい聞き取りができるかを測定するのが目的です。40dBの「さ」は聞こえないけど70dBの「さ」は聞こえる。いや80dBでないと分からない、などこれは先の純音測定では分からない能力の測定なのです。

この結果は右耳は70dBの大きさの声が半分理解でき声の大きさがそれ以下でもそれ以上でも聞き取りは悪くなるということを表しています。また左耳は同じ70dBでも20%しか言葉ができませんでした。この測定は単音節「さ」とか「あ」とかがヘッドフォンから聞こえそれを聞こえたとおりに書き写しどれだけ正解しているかを測定します。この測定では単音節ですが会話は繋がっています。一般的に60%の聞き取りができたら会話が成立すると言われています。

70dBはやや大きめの声です。

補聴器は声を大きくする機械です。日常会話は40~60dBなのでそのままでは聞き取りができないので補聴器で20dBほど大きくしてやって60~80dBの声として聴くことで言葉を理解します。

70,80dBの言葉の聞き取りが80%くらいあれば会話が成立しやすいのですが、Hさまの耳は右で半分しか理解できないということです。

ちなみにこのグラフの左側にある実線の曲線は健聴者の平均値です。つまり健聴者は40dBの大きさがあればすべての言葉が理解できるという意味です。

言葉の聞き取りの能力はその人の耳に頼らざるを得ません。Hさまの場合右耳はどんなに頑張っても半分くらいしか言葉の聞き取りができません。これは補聴器を装用しても同じなんです。補聴器は声を大きくするだけです。ぼやけた「さ」をはっきりした「さ」にはしてくれないのです。

この測定結果を補聴器購入前にお客様にお伝えできるこの測定はとーーーーっても大事になるのです。だって普通補聴器をすれば聞こえるようになると思うでしょ?でもそうではない場合もあるのです。そこをご理解いただくことは購入後の補聴器に対する期待値を無駄に上げずにすみます。ご家族の方にもご理解いただけます。Hさま、同行のお子様にもその説明は十分にご理解いただいたうえでご購入いただきました。

測定結果を考慮し今回は右のみです。

Hさまの場合、補聴器に期待してはいけないなどと書きましたが、それでも試聴機で聞いていただくと当たり前ですが裸耳よりだんぜん聞き取りが良くなるわけで。Hさまも喜んでおられました。ですので、過大な期待にはお応えできませんが、装用しないよりは数段生活品質は向上します。

ありがとうございます!

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